インプラントやインプラントを使った治療法「オールオン4」は、人工歯根を埋め込み、人工歯を被せて噛む機能と見た目を回復する治療法ですが、「人工物なので虫歯にならないから」と、天然歯よりも健康リスクが低いように思われがちです。
ですが、人工のものとはいえ、人工歯根を骨と歯茎の中に入れているので、お手入れが不十分な場合、その境目から細菌感染を起こすことがあります。
これは天然歯でいうところの歯周病の状態に近いものですが、実はインプラントの場合、歯周病よりもリスクが高く、しっかりとお手入れを行わないと病状が急速に進むことがあるので注意が必要です。
インプラント周囲炎はインプラントを失う主な原因となるものです。
今回はインプラント周囲炎とはどういうものか、また、かからないようにする対策についてもご紹介します。
インプラント周囲炎とは

インプラント周囲炎は、インプラント周囲の組織(骨や歯茎)が炎症を起こし、徐々に破壊されてしまう病気です。骨の破壊が進むと、やがてインプラントを支えきれなくなり、インプラントを失う原因となります。
インプラント周囲炎と歯周病の原因は、ともに歯周病菌の感染とされています。
インプラント歯周囲の清掃が不十分だとやがて歯垢が溜まり、その中にいる歯周病菌が歯茎に炎症を起こし始めるのです。
ここまでは同じなのですが、インプラントと天然の歯の場合、骨との結合の形式や、歯茎との接合の仕方に違いがあります。このような違いが、感染しやすさ、病状の進行速度に影響していきます。
インプラント周囲炎が歯周病より怖い理由とは?
感染が深部に到達しやすい
インプラントと歯茎の結合は天然歯の場合と比べて弱いため、インプラント周囲に歯垢が溜まると細菌感染が奥に行きやすい傾向があります。
自覚症状が少ない
インプラント周囲炎は、歯周病と比べて歯茎の出血や腫れといった初期症状が少なく、病状が進行してもぐらつきや痛みを感じにくい傾向があります。
そのため、本人が異常を自覚にしにくく、発見が遅れてしまうことがあります。
進行が速い
歯根膜というものを介して骨と結合している天然歯の場合とは違って、インプラントは骨と直接結合しています。
そのため、血液供給が天然歯と比べて少なく、免疫機構が働きにくいこと、また、力の負担を軽減する歯根膜がないことで骨に直接ダメージが加わりやすく、感染を起こした場合に骨の破壊が進みやすい傾向があります。
インプラント周囲炎にかからないようにするための対策

インプラント周囲炎を予防するためには、次のようなことに気をつけましょう。
口の中の清潔を保つ
インプラント周囲炎の原因はインプラントの周囲に溜まった歯垢です。歯垢が溜まらないようにするためには、食後の歯磨きを丁寧に行うことが大事です。
タバコを吸わない
タバコは歯茎の血行を悪くしますので、インプラント周囲炎のリスクを大きく高め、早くインプラントを失うことにつながるため、禁煙することが大事です。
アルコールは控えめに
適度な飲酒は問題ありませんが、日常的に大量に飲酒をしていると口内が渇き自浄作用が落ちるのと、歯磨きをせずに眠ってしまう原因にもなるので、コントロールして飲むようにしましょう。
全身の健康状態を良くしておく
糖尿病や骨粗しょう症などの疾患にかかると、インプラントを支えている骨を失いやすくなりますので、全身の健康管理にも気を付けましょう。
食事の仕方に気をつける
糖分の多い食事、間食を摂る習慣、寝る前に食べる習慣といったことは歯垢を溜まりやすくし、インプラント周囲炎のリスクを高めますので、気をつけましょう。
歯ぎしり・食いしばりに気をつける
歯ぎしり・食いしばりをしている人は、日中の癖になっている場合には意識してやめるようにし、夜間に行っている場合には歯科でマウスピースを作ってもらい、就寝中に装着するなどの対策を取り、インプラントに過剰な負担をかけないようにしましょう。
歯科でのメインテナンスを欠かさない
インプラントをした方は定期的にインプラントのメインテナンスを受ける必要があります。これをきちんと行っていないと、異常があっても放置されてしまい、インプラントを早期に失うリスクがあります。