お口の中のトラブルというのは、歯に関するものだけではありません。
歯周組織のひとつである歯茎が赤く腫れたり、歯茎から出血したりすることもあります。とくに、歯茎が黒くなるようなことがあれば要注意です。お口の中に歯茎を黒くする原因があることは想像できますが、それがもしインプラント治療であったらどうでしょうか。ここではインプラント治療によって歯茎が黒くなる可能性やその対処法について詳しく解説します。
歯茎が黒くなる原因とは?
一般的に、歯茎が黒くなる原因としては、銀歯から溶け出した金属イオンの沈着が挙げられます。保険診療で作った銀歯というのは、長い間使用を続けていく中で、その成分の一部が溶け出すことがあるのです。具体的には、唾液などの刺激にさらされることで、銀イオンなどが溶け出し、歯茎に沈着するようになります。その結果、歯茎が黒くなることもめずらしいことではありません。
それから、喫煙習慣がある人も、歯茎が黒くなることがあります。タバコにはヤニなどの着色性物質がたくさん含まれていたり、煙による刺激によってメラニン色素が沈着したりするため、歯茎が黒くなってしまうことがあるのです。また、喫煙に関しては、歯も着色されることがあります。
おそらく、歯茎が黒くなる一般的な原因はこの2つといえます。さらに、インプラント治療も歯茎が黒くなる原因になることがあります。
どうしてインプラントで歯茎が黒くなるの?
インプラント治療では、保険診療で使用する銀合金は用いられませんし、何が原因で歯茎が黒くなるのか不思議に思われる方も多いことでしょう。確かに、チタンという金属は使用しますが、とても腐食されにくく、歯茎が黒くなる原因にもならなさそうです。実際、インプラント治療で歯茎が黒くなることがあるのは、金属イオンの溶出ではありませんが、金属の色が透けて見えることで、歯茎が黒く見えることがあるのです。
金属が透けて見えることで歯茎が黒く見える
インプラントの上部構造というのは、主にセラミックやジルコニアで作られています。歯の色や質感に似た素晴らしい材料で、装着後は歯列に調和して天然の歯と見分けがつかないくらいです。そのため、金属が使われているのはアバットメントやインプラント体の部分となります。これらは通常、口腔内に露出されることはありませんし、透けて見えるようなこともまずありません。けれども、歯茎の状態が変化すると、インプラントの一部が歯茎を通して透過されることがあるのです。これがインプラント治療によって歯茎が黒く見えるメカニズムです。そこで気になるのが「歯茎の状態の変化」ですよね。
インプラントは歯周病にかかりやすい?
インプラント治療は、歯周病に対して弱い補綴治療ですが、同時に歯周病にかかりやすくもあります。実際、「インプラント周囲炎」という病名が存在するくらい、インプラント治療後には歯周病のリスクが上昇します。ですから、インプラント治療後に歯周病にかかると、歯茎が下がるなどの変化が起こって、インプラントの一部が透けるようになるのです。また、歯周病によって歯茎が腫れ、赤黒く見えることもあります。これがインプラント治療における歯茎の黒ずみの根本的な原因といえます。ではなぜ、インプラント治療は歯周病にかかりやすいのでしょうか。
インプラントが歯周病にかかりやすい理由
インプラントは、天然の歯に近い噛み心地や審美性を兼ね備えた素晴らしい補綴装置ですが、あくまでも人工物でしかありません。天然歯のような自浄作用はあまり期待できず、プラークなどがたまりやすい傾向にあるのです。そのため、ケアを怠るとプラークや歯石が堆積して、歯周病を誘発します。インプラント治療をした際には、その後のケアをしっかりとしなければなりません。
インプラントによる歯茎の黒ずみを予防するために
インプラントによる歯茎の黒ずみを予防するためには、徹底したケアが不可欠です。自宅で行うセルフケアはもちろんのこと、歯科医院で受けることができるプロフェッショナルケアも定期的に受ける必要があります。そもそもインプラントは、治療が完了した後も定期的に歯科に通うよう、歯医者から指示されるかと思いますので、それに従うようにしてください。毎日のブラッシングを徹底し、定期的に歯医者に診てもらうことで、インプラントの状態を正常に維持することが可能となります。同時に、歯周病も予防し、歯茎が黒く見えるような現象も起こらなくなります。
まとめ
このように、インプラント治療でも歯茎が黒く見える場合があります。
それは歯周病によって歯茎の色が赤黒く変色したり、インプラントの一部が歯茎から透けて見えたりすることが原因です。
いずれにせよ、歯周病を予防することで防止することが可能ですので、オーラルケアを徹底することが重要です。とくにインプラントのメインテナンスは欠かすことなく、定期的に受けるようにしましょう。