インプラントにしたから虫歯や歯周病の心配はしなくいいと思っていませんか?
確かに、インプラントの人工歯根や義歯は人工物ですので、虫歯にはなりません。しかし、歯周病はどうなのでしょうか?人工歯根や義歯に接している歯ぐきや顎の骨は大丈夫なのでしょうか?今回は、インプラントをした人に多くみられるインプラント周囲炎について、原因や対策を紹介いたします。
インプラント周囲炎ってどんな病気?
インプラント周囲炎は、やっかいなことに進行がとても速いのです。歯周病の10~20倍も速く悪化していきます。これは、インプラントが天然の歯と比べると栄養血管が少なく、炎症に対して抵抗する力が弱いからです。
そして、進行しても歯周病のように自覚症状が出ないところも恐いのです。歯周病であれば、進行すると、歯がぐらぐら動く、歯茎が腫れる、歯茎から出血する、痛みが出るなどの症状が現れるため、本人が気づきます。
しかし、インプラントの周囲炎は、かなり進行していても自覚症状がなく、不自由することなく食事もできるのです。歯周病と同じように歯ぐきが腫れた、歯ぐきが痛い等の症状に気づいたときには、かなり重症化していることがあります。
また、気づかずそのまま放置しておくと、インプラントの周囲の骨が無くなることで、ある日突然ポロッと取れてしまうのです。そうなってからでは、かなり進行していることになります。
インプラント周囲炎の原因はなに?
すると、インプラントを支えている顎の骨にまで達してしまい、感染してしまうのです。放っておくとどんどん進行していくので、進行を止めるためには治療が必要になってきます。
インプラント周囲炎の治療や対策は?
また、インプラントと歯ぐきの間に薬剤を入れて洗い流したり、薬剤でうがいをしたりして、口の中の細菌を洗い流します。しかし、これではなかなか改善しないことが多いです。そこで、抗生物質を注入し、飲み薬も併用する必要があります。徹底して細菌を無くさないと、バイオフイルムは破壊することができないからです。
しかし、薬を長期間使うことができません。インプラント周囲炎の根本的な原因の細菌を断つには、歯周病と同じように外科的手術が必要です。外科的手術では、麻酔をした後に歯肉を剥がしていきます。インプラントの人工歯根が見える状態で、感染した歯周ポケットを除去していくのです。そして、薬剤や器具を用いて人工歯根の表面を拭いたり磨いたりします。通常であれば、この操作が終わった後に傷口を閉じて終了となりますが、感染によって失った歯ぐきや顎の骨を回復させるために、再生療法が行われることもあります。
また、インプラント周囲炎の進行具合によっては、いったんインプラントを撤去することがあります。その後、骨が回復してきたら、もう一度インプラントを埋め込むこともできるでしょう。
インプラント周囲炎を放っておくとどうなる?
また、インプラント周囲炎が進行して、義歯がぐらつく症状がでているのであれば、歯並び全体のバランスが崩れている可能性があります。噛み合わせが変わっていくことで、どこかの歯に負担がかかることにもなるのです。
また、インプラント周囲炎は歯周病と同じで、細菌が歯ぐきの血管から全身へと巡っていきます。また、細菌を唾液と一緒に飲み込むことでも、全身にいきわたってしまいます。
最近よく話題になっているように、動脈硬化や心臓病を引き起こすこともあるのです。
インプラント周囲炎を甘く見ていては痛い目にあいます。インプラント周囲炎に一度かかってしまうと、進行がとても速く、完全に治すのも難しいです。インプラント周囲炎にならないように、日頃からご自身による歯磨きや歯間ブラシ、デンタルフロスを用いたケアが大切になってきます。そして、最低でも1年に2回は歯医者で定期検診を受けて、インプラント周囲炎の早期発見を心がけましょう。
もし現在気になる症状がある場合は、お早めに歯医者で相談することをおすすめします。