人工歯で補う治療法の一つに「インプラント」という方法があります。
これは歯を支える骨にチタン製の土台を埋め込み、人工歯を固定する方法です。他の方法に比べて天然歯に近い使用感を実現していますが、実は「歯周病」のリスクが高くなってしまうのです。そこで、天然歯よりもインプラントのほうが歯周病になりやすいメカニズムについてお話しいたします。
そもそも「歯周病」って何?
歯周病は、進行すると次第に炎症を拡大させ、歯肉との境目を深くしていきます。これが次第に歯を支えている土台である骨「歯槽骨」を溶かしてしまいます。土台が溶かされれば徐々にその上の歯がぐらついてしまい、最終的に歯は土台を失って抜け落ちてしまいます。
インプラントのほうが歯周病になりやすい理由
歯周病がインプラントに与える影響
インプラントが虫歯を恐れないのは、人工物であるためそもそも虫歯の対象にはならないということです。ならば歯周病も、と思われるかもしれませんが、これは大きな間違いです。インプラントはチタン製のネジ状の人工物を、歯を支える骨の部分に埋め込みます。親和性が高く、骨の再生とともにチタン製の土台は安定していきます。最終的に骨の一部のような状態になることで、入れ歯やブリッジと比較して安定性が高いのです。この仕組みが、歯周病によるインプラントの損失につながってしまうのです。
チタンや人工歯部分は歯周病菌の影響を直接受けることはありません。しかし、周囲の歯茎や骨に関してはその限りではありません。インプラントの周囲が歯周病の影響を受ければ、チタン製の土台の周囲の骨も溶かされてしまいます。インプラント自体は何の影響も受けないとしても、周囲の骨が溶ければインプラントがぐらついてしまいます。そして、最終的に抜け落ちてしまうのです。
歯周病にならないためには「ケア」と「メンテナンス」が重要
正しい歯磨きを習得するためにも、メンテナンスのために定期的に歯医者さんに通院することをお勧めします。インプラントの治療完了後は、定期的に歯医者に通院して歯科医師にインプラントや他の歯の状態をチェックしてもらいます。これにより歯周病などのトラブルが発生しないことをきちんと確認します。
さらに、必要に応じてプロの手によるケアを受ける必要があります。「スケーラー」という器具を用いて、細かい所の汚れや歯石を除去します。通常の歯磨きでは除去できない汚れを取り除くことにより、歯周病のリスクを大幅に減らすことができます。
さらに歯医者さんでは「歯磨き指導」を受けることができます。歯磨きの時にはどうしても癖や磨き残しの出やすいところが出るため、プロの手によってその人に合った正しい歯磨きの方法を教えてもらうことができます。
自宅でのケアと、プロの手によるメンテナンスを併用することにより、歯周病のリスクからインプラントを守ることができます。いざ本格的な歯周病治療を受けるとなると相応の費用と手間がかかることになりますので、普段からケアを心がけることでそのリスクも抑えることができます。インプラントも天然歯も歯周病が脅威であることには変わりませんが、インプラントの場合はさらにリスクが増します。せっかくのインプラントを長く使い続けるためには、定期的に歯医者さんに通院して状態を確認してもらうことが重要なのです。