インプラント治療は失った歯の機能を取り戻すことができる画期的な方法です。
治療に使われるインプラントには、世界中のメーカーでたくさんの種類があり、どのメーカーのものにも、それぞれ特徴があります。もちろん、どのメーカーのものがいいかどうかということは、患者さんにとって気になることの一つかもしれませんね。今回は、そんなインプラント治療に使われるインプラントのルーツについてご紹介したいと思います。
インプラントの種類と歴史
日本国内のインプラント治療は、1980年代まではサファイアインプラントやブレードインプラントという治療が行われてきました。サファイアインプラントとは、今では使用されていない治療の一つで、人工サファイアをインプラントに使用する治療法です。骨の代わりに固いサファイアを埋め込みその上に人工歯をかぶせる治療ですが、サファイアは骨との結合ができないため、成功例も少ない治療法でした。
インプラントの治療法が大きく変わり始めたのは1983年以降と言われています。これは、世界初のインプラントシステムであるブローネマルク・インプラントが国内で臨床応用されたことで、インプラントにはサファイアではなく骨との結合に優れているチタンを使用したこと、インプラントとフィクスチャー・アパットメントの部分に分けて、それをつなげるというインプラントの治療技術の進化があったことです。
インプラント技術の進歩は、偶然の発見から生まれた!?
その発見からおよそ10年以上にわたり、彼は科学者とともにさらなる研究と実験を重ね、チタンはある条件のもとにおいては、人間の体内に異物とは認識されずに骨と結合するという性質を立証するとともに、人間のあごの骨と結合する人工歯根であるインプラントシステムを開発しました。
ブローネマルク・インプラントの進化
現場の歯医者さんたちの技術に加えて、ブローネマルク・インプラントの導入にはもう一つ大きな弱点と呼べるものがありました。当時のインプラントの表面は、現在の粗造表面ではなく機械加工表面でした。それにより骨結合を起こしにくかったということがあり、骨が柔らかい患者に向かないといったケースや骨が硬い下顎骨専用のインプラントにしか使えないということがありました。
そんな弱点のあるブローネマルク・インプラントを克服したITIインプラント(現ストローマン社)が1998年に誕生し、国内でも発売されるようになりました。このITIインプラントは、粗造SLA表面でできていて、骨結合しやすく1回法の治療でも行えるように改善されたものです。これにより、現場の歯科医師が治療を行いやすくなっただけではなく、インプラント治療の失敗例も少なくなりました。
2000年を過ぎてからは、タイユナイトというインプラントと周辺の細胞や組織が密接に結合する技術も生まれ、ブローネマルクが発明した近代のインプラント治療の技術はさらに高まり、成功率は100%近くにまで高くなっています。近代インプラント治療の発展の裏に、ほんのささいな偶然から生まれたブローネマルク氏の発明が大きくかかわっているのです。