インプラントを入れた後に、まれに違和感が生じることがあります。
違和感を持ってしまった患者さんは「天然の歯に近い噛み心地が得られると聞いて、インプラントを入れたのに…」と不安に感じるでしょう。もしくは、大きな手術と長期の治療を受け、そして決して安くない治療費を支払っているのに「なぜ」という感情がわくかもしれません。
しかし大多数の患者さんは違和感など生じずに、インプラントとともにすごす食生活を満喫しています。この差はどうして生じてしまうのでしょうか。
インプラントは大多数の患者さんを満足させている治療法
厚生労働省の「歯科インプラント治療の問題点と改題等作業班」によると、インプラントの10~15年後の残存率は、上顎で90%、下顎で94%です。抜歯即時インプラント埋入や骨移植を伴った場合は、若干落ちて87~92%です。この場合の「残存率」には、単にインプラントが歯にくっついているだけの状態はカウントされません。「痛みや不快がない」「感染の兆候がない」「インプラントが動くことがない」「患者さんも歯医者も満足できる状態」という条件をクリアしているときの残存率です。つまり9割近くの人はインプラントを快適に10年以上使い続けているということです。この数字からも、違和感が生じることは滅多にないことがわかると思います。
(資料:厚生労働省委託事業「歯科保健医療情報収集等事業」歯科インプラント治療のためのQ&A(厚生労働省・歯科インプラント治療の問題点と改題等作業班)
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/shika_hoken_jouhou/dl/01-02.pdf#page=1&zoom=70,0,-120)
それでもインプラントを入れた後に違和感を持つ方はいます。また違和感は患者さんによって異なります。
●どういうときに違和感が起きているか
●どのような違和感か
●どのような原因が考えられるか
についてみていきましょう。
インプラント治療を終えた直後の違和感
インプラント手術は、歯肉を切開し、顎の骨に穴を空け、チタンのインプラントを埋め込むのですから、口のなかは大きな衝撃を受けています。インプラント治療後に違和感が発生するのは、当然といえば当然です。そしてこの違和感は時間とともに軽くなり、普通は何も処置しなくても自然消滅します。
手術を終え、麻酔が切れたころに違和感が発生するかもしれません。痛みや不快感といった症状が現れるかもしれません。また出血が止まらないこともあります。自宅に戻っても痛みが残っていて、歯科クリニックで処方された痛み止め薬でも効かないようでしたら、翌日歯科クリニックに相談したほうがいいでしょう。
インプラントを入れて数年後に発生する違和感
そのような違和感の原因としては、インプラントの摩耗が考えられます。このように説明すると「インプラントは少なくとも10年は持つといわれた。一生使い続ける人もいると聞いたこともある。数年でインプラントが摩耗するのはおかしい」と感じる方もいるでしょう。顎の骨に埋めたインプラントは10年以上はもちますし、インプラントと結合している人工歯も5年以上使えます。
ではなぜ数年でインプラントが摩耗してしまったのでしょうか。原因としては患者さん自身の「歯に優しくない」癖が考えられます。睡眠時に歯ぎしりをする方や、日中起きているときに頻繁に歯を食いしばる方は、インプラントが摩耗しやすくなります。このような方の違和感を取るには、癖を直すしかないでしょう。
インプラント周囲炎による違和感
インプラント周囲炎を発症させないためには、
●1日最低3回の食後の歯磨き
●デンタルフロスや歯間ブラシの使用
●インプラント専用歯ブラシの使用
といった、歯磨きの徹底が必要なります。
特に会社員の方は、会社でのランチ後の歯磨きと外食したときの歯磨きがおろそかになる傾向がありますので注意してください。
まとめ~違和感が生じたらすぐに歯医者にかかろう
普通は生じるはずのない痛みが生じているので、必ずどこかに何かしらの異常が起きているはずです。異常を特定できるのは歯医者しかいないので、少しでも「口のなかがなんか変だな」と感じたら、次の定期受診を待たずに歯科クリニックに行きましょう。